ジェシー・ハムの回転木馬

カルーセル 013マッピング

漫画を読むオオハシ
ジェシー・ハム
ジェシー・ハム

コミックはしばしば、時間を扱うメディアとして語られる。ストーリーのテンポについて、ストーリーの瞬間が 時系列に並べられていることについて、タイトルを継続的なシリーズと 表現したりする。マンガは時間の流れを図式化する。しかし、マンガは空間をも図式化していることを忘れてはならない。

マンガは複数の画像を私たちに見せてくれるため、一枚の絵では決して見ることができないような、キャラクターの周囲をより詳細に描写することができる。一連のコマを通して、漫画はキャラクターの部屋の四方の壁や、クローゼットに潜むもの、建物の外観などを見せることができる。また、キャラクターが旅に出れば、私たちは一歩一歩ついていくことができる。こうして明らかになったことは、単なる背景を周囲の環境に変え、キャラクターを四方八方から取り囲み、一日中彼を追いかける環境の感覚を生み出す。

この没入感のある世界構築(マッピング)は、意図的に計画されたものでなければならない。セルジオ・トッピが描いた『ヴェラ・オルランド』のページを考えてみよう(例1)。トッピの絵は素晴らしい。テクスチャーは変化に富み、構図はバランスがとれていて面白い。しかし、このページでは、登場人物が互いにどの位置にいるのか、あるいはどのような環境にいるのかさえも示されていないことにお気づきだろう。屋内なのか屋外なのか。パネル1の登場人物はパネル2の登場人物の中にいるのか。もしそうなら、彼は彼らの後ろなのか前なのか?その距離は?同じ質問がパネル3の登場人物にもできる。トッピは登場人物の服装や外見については多くの情報を与えてくれるが、彼らがどこに立っているのか、どこに移動しているのかについては沈黙している。1コマではなく3コマを提供されただけで、環境については何も語っていない。

例1(Toppi)は、Immagini Di Sicilia, © 1986 The Grafema Consortiumより。
例2(Herge)は、The Black Islandより。 アメリカ版 ©t 1975 by Little, Brown, and Company.

では、エルジェの『黒い島』のタンタンのページを考えてみよう(例2)。ここでは、マッピングの動きを見てみよう。最初のコマでは、タンタンと彼の犬スノーウィーが、陸地(左側にちらっと見える)を出発したばかりの船に乗っていることがわかります。パネル2では、彼らの目的地が地平線上に浮かぶ小さな島であることがわかる。パネル3では、島の城と、近くの崖を進むタンタンのボートが見える。各パネルは、ストーリーの出来事だけでなく、タンタンが置かれている環境と正確な場所について、新しい情報を提供している。

パネル4と5では、タンタンとスノーウィーがボートを降りて、城に向かって歩いているのが見える。パネル6では、二人は城壁にたどり着き、数メートル先に木製のドアが見える。タンタンは7コマ目でこの同じドアを通り抜け、8コマ目でも後ろに見える。このように、タンタンの動きの方向と距離を伝えるために、ドアという目印を使うことをフックアップと言います。ドアの存在が、それぞれのコマを次のコマにつなぎ、タンタンの動きを理解する手助けをしているのです。

パネル8では、出入り口と階段の端が見え、パネル9でタンタンが階段を上る。パネル10では、階段の吹き抜けから出ると、外壁にメルロンがはっきりと見える。このメルロンが、パネル11のロングショットと連動し、塔の上端に沿ったメルロンがタンタンの居場所を示す。エルジェは、この環境とタンタンが通る道を注意深く計画し、明確な絵、徹底した背景、いくつかのフックアップを使って、そのルートに沿って私たちを導いている。

エルジェの注意深いマッピングは、彼のページがトッピのものよりも優れていることを意味するのだろうか?必ずしもそうではない。マンガの目標は多種多様だ。徹底的にマッピングされた環境は、1つのシーンで目指すゴールの1つだが、ムードやテンポ、表情など、明確な環境を必要としない要素にこだわることもある。背景のないクローズアップの顔が理想的かもしれません。明瞭な環境をマッピングすることは義務ではないが、有用なオプションである。

そして、それはあまりにもめったに使われないオプションだ。真っ白な壁の前に立っているキャラクターや、空を背景にしたシルエットのキャラクターを描くのは、コマからコマへと追跡する背景の詳細がない方がずっと簡単だ。また、ディテールを盛り込もうと思えば、1つのコマで背景のディテールをたくさん描き、その後のコマではそのディテールを別の角度から描くことはせず、それぞれでまったく異なるディテールを描く方が簡単だ。その方が簡単で速い!その結果、読者が精神的に占有できるような、一貫した説得力のある環境を描くマンガはほとんどない。現代のコミックを開いて、エルジェのコミックでよく見られるように、同じ背景が3つも4つも異なるコマで、同じように異なる角度から描かれているのを見るのは、かなり幸運なことだろう。

しかし、エルジェはただ時間を無駄にするためにそんな苦労をしたわけではない。彼の環境は読者を包み込み、登場人物と一緒にあちこちに連れて行き、物語を説明から体験へと変える。よくマッピングされた環境が常に 必要で役に立つとは限らないとしても、その存在は一般的に物語を豊かにし、読者の心をつかむ。説得力のある環境を手間をかけて描き、登場人物と読者を説得力を持って導くことができれば、マンガにおいて大きなアドバンテージとなる。

また来月、ここで会おう!


ジェシー・ハムの回転木馬は毎月第2火曜日にこのトゥーカンに登場する!

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